刈谷の電装線を巡る
JR東海道線刈谷駅。2面4線の特別快速まで全ての列車が止まる駅で、名鉄三河線との乗り換え駅でもあります。
駅付近には市民会館やショッピングセンターに展示場。そして豊田自動車のグループ会社である豊田自動織機、トヨタ紡織、トヨタ車体、デンソー、アイシン、ジェイテクト、愛知製鋼があります。トヨタ自動車や世界の自動車産業の中心地です。
という事で、昔はこのトヨタグループの工場から刈谷駅へ物資を運ぶ専用線がありました。刈谷駅から豊田紡織の方へ向かう「紡織線」。デンソー、アイシン、ジェイテクト方面へ向かう「電装線」。
紡織線は東海道線とほぼ平行するような線形で走っていたと推測出来るため今回は割愛(厳密には、正確な線形が分からなかったから)。電装線にスポットを当てていきたいと思います。
そもそも何でこんなニッチな廃専用線を調査するに至ったかと言いますと、私の曽祖父が刈谷駅で信号士の仕事をしていたと亡き祖父から聞いた事がきっかけ。昔の刈谷駅は名鉄とJRの間は線路で繋がっており、名鉄と国鉄間で貨物連絡があったそうです。私はその時代は写真でしか見たことがありませんが、名鉄とJRの間の空間にコンテナが沢山あった記憶はあります。
私も昔は刈谷民だったので、地元の廃線跡と言うのは非常に興味があります。
という事で航空写真。航空写真と言うとgoogle先生をイメージしますが、今回は国土地理院から。こっちは古い航空写真があるので、廃線跡や昔の建物を見る時にはこっちのが便利です。
下にあるのが現在の刈谷駅そこから写真上端の現デンソー方面へ専用線がありました。
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電装線は1度線路の付け替えが行われており、その廃線跡は青線の示すような道路として一部転用されている。と言うのが一般説。
確かに現産業振興センターの裏には専用線っぽいカーブを描く駐車場があります。そこから大通りに線を引くと写真の青線のような専用線跡が浮かび上がるわけです。
と言うのが今回のお話。誰が得するか知らないお話。
1948年(昭和23年)の同じ場所の航空写真。刈谷駅と豊田自動車電装部工場(現デンソー)の間はほぼ田んぼです。
刈谷駅も今より線路が多く、名鉄と国鉄間で貨物輸送が行われていた時代です。
さて、この駅と工場の間に電装線があるのは分かるでしょうか?
赤線で示す部分が今回の本題、電装線です。
戦時中に豊田自動車の工場で航空機部品を作り、その輸送に使っていたとされています。基本的にはトラのような小さい貨車で刈谷駅まで運んでいたそうです。
1948年と現在の比較。見にくいので線路跡の線のみ重ねていますが、実際に専用線のあった場所と付け替えがあったと言われる線。
そもそもの分岐部分が大きく異なっています。
また、1948年の道路と現在の道路では道がちょっとズレています。
1948年から現在に至る間に何があったのか。
1958年の航空写真。駅周辺の再開発が行われ、駅周辺の道が今と同じような配置になりました。
注目すべきは電装線。本線から北に分岐する部分がバッサリ切られています。
代わりに新電装線(?)らしき線路or道路の線形が出来上がっています。
これが線路なのか、道路なのか、イマイチ分かっていません。
ただ、確実に言えるのは、1949年以降豊田自動車から独立した日本電装やその他トヨタグループ各社の歴史において、刈谷の専用線を用いて自動車部品輸送を行った記述が無いという事。
私はこの事から電装線は切り替えられておらず、再開発によって廃止されたと考えています。まだ確証はありませんので推測ですが。
という事で、実地確認。
産業振興センターの裏にある駐車場。青線部分の分岐箇所に当たります。
確かにここに線路があったと言われてもそれっぽい気がします。
あったかどうかは調査中です。
デンソーとジェイテクトの間。電装線の跡地の殆どは駐車場や建物になっていますが、唯一ここだけそれっぽく空きスペースがあります。
丁度このあたりに電装線の停車場(?)があった場所。本当に偶々この部分だけそれっぽくスペースが空いていますが、専用線の名残要素では無いと思います。
が、いい感じに仕切られているとそれっぽく見えます。
反対側。電装線があった時はここから奥にも線路が伸びていましたが、その面影は当然ありません。
企業の専用線と言うのは町の歴史書には書かれないですし、戦時中の線路となるとかなり面倒なやつです。幸い、大きな会社の専用線だったので、企業の歴史書は割と楽に見ることが出来ましたが、やはり廃止時期や線路に関しては不明確な部分が残りました。
曽祖父はこの線路がある時代に信号士として貨物入れ替え業務をしていたと考えるとなかなか興味深い物です。
廃線巡り&調査は私の専門分野ではありませんが、少し元地元の歴史に触れる事が出来てよかったです。
付け替えの電装線があったかどうか、これが私の最後の宿題にしたいと思います。
今回はここまで。